HOME > 専門課程 > 総合芸術学科/アート・デザインコース > 特別対談:柏木 博×長沼 行太郎

総合デザインコース特別顧問の柏木 博先生と、総合デザインコース専任講師の長沼 行太郎先生による対談です。
文化学院が目指す、これまでにない教育とは?
- 柏木
- 従来の専門学校とは異なる教育プログラムをつくる、というのが私のミッション。総合デザインコースでは、理論(考える)、演習(考えならがら手を動かす)、実技(徹底的に手が動くようにする)の3つの柱でプログラムをつくろうと考えています。
- 長沼
- 手を動かし、頭を動かす、それらが相互に響き合うプログラムって、おそらくこれまでの専門学校にはなかったと思いますね。2年間でそれを教えるのも大変だとは思いますが(笑)。
- 柏木
- 教え方も構築していかなければならないと思っているんです。長沼先生が専任で理論を、上田先生が実技、そして私が演習と、その3人で、どういうスタッフが望ましいか、じっくり議論しながら配置していきたいですね。
どのような方法で三位一体型の教育を展開していくのか?
- 長沼
- 「クリエーター」という言葉は、インターネットが普及してから多用されるようになって、非常に「ハイテクな操作をする人」と思われがち。だけれど、柏木先生が言われる手を動かす、頭を動かすことを同時にできる人というのは、ハイテクとローテクの両方持ち合わせている人のことで、ローテクを無視してはいけないんじゃないかと思いますね。例えば模写や写本などは、ローテクでかつハイテクな人間を育てるのに大事なメソッドではないかと。教育方法に導入できないかな。
- 柏木
- 音楽の世界とかもそうですよね。ピアノやギターの弾き方など、先行する演奏家の演奏をたどって、何度も何度もトレースする。そうすることで自分の演奏方法を編み出して行く。美術の世界でも同じで、アンディ・ウォーホルや古くはゴッホなども人の絵を模写している。そこから自分の方法論、組み上げ方を考えていくんですね。少なくとも日本の美術の世界では、このことを忘れていったと思います。模倣をやってはいけない、オリジナリティが大事だって最初から言うから迷走していったりする。例えば、論文は必ず先行研究をしますよね。思考もやっぱり模写から始まってるということですよ。
- 長沼
- 手を動かすというのは非常に身体的な行為。脳を動かすから発見もでてくる。模写は模写で終わらないということですね。1年間模写だけというのもおもしろいかもしれません。みんな新しい発見をしていくのではないでしょうか。
基礎的なことをこつこつやっていくのはつらいこと。だけれど、理論と実技の間に演習が入って、その時々で成果を確認できれば、どうつながっていくのか見えてくるし、上達も早いのではないでしょうか。この三位一体型のカリキュラム、期待しています。
文化学院は大学とどこが違うのか?
- 柏木
- 文化学院は、高校卒業や大学卒業など前歴を問わずに受験できることが大学とは大きく異なります。高校を出てすぐに来た人と大学や社会に出てからきた人。年齢差のある人々がいる、そんな混成部隊が望ましいですね。互いにとても刺激になると思います。
- 長沼
- リチャード・フロリダというアメリカの都市経済学者が、「クリエイティブ・クラス」といって、創造的な仕事をしている人々の階級がリードしていく、21世紀はそういう時代なんだと言っています。僕は「クリエーター」という言葉と「クリエイティブ・クラス」という新しい階級を関連づけて考えてみようと思っています。
学生って時代に適応しようとか乗り遅れてはいけないとか考えがち。だけれど、わざわざ総合デザインコースを選んでくるというのは、大学進学する人たちとは別の道を歩もうとしているわけだし、大学や社会に出てから入ってくる学生も、時代に適応しようと思ってくるわけではないと思う。自分から時代に挑んでいく、それこそクリエイティブ。教育も同じで、教師も学生も全体として、時代に挑戦していくという姿勢を持っていきたいですね。 - 柏木
- まったく異存はありませんね。今日これがトレンドだ、って言ってそのトレンドに合わせる人は身動きがとれなくなっちゃう。そうではなくて、今はこうなっているけれど、どういう風にこれを考え直して、組み替えなければいけないのか、どういうふうにエディットしなくてはいけないのかということを考え、その方向に向かって行ってほしいですね。
プロフィール
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アート・デザインコース特別顧問
柏木 博武蔵野美術大学教授。近代デザイン史専攻。デザイン評論家。
1946年神戸生まれ。武蔵野美術大学卒業。デザインをとおして近代を読み解く作業をする。
展覧会監修:『田中一光回顧展』(東京都現代美術館、03)『電脳の夢』(日本文化会館パリ、03−04年)ほか多数。
著作『モダンデザイン批判』岩波書店02年、『「しきり」の文化論』講談社04年ほか多数。 -

アート・デザインコース専任講師
長沼 行太郎専門は、記号論・メディア論。表現と技術とのかかわり、見えるものと見えないものとのかかわりの探求がテーマ。学生時代より、言語・メディア・都市についての批評活動、「日本読書新聞」「宝島」誌等の企画・執筆、シンクタンクで「芸術と技術の関連」「ニュータウンの噂パニック」など調査研究活動を行なう。
1980年代にはNHKラジオのインタビュー番組「新学芸展望」にレギュラー出演、各界の研究者・芸術家と対話をした。大学で「編集デザイン」「コミュニケーション論」「メディア論」を講じ、高等学校「国語表現」「物理」などの教科書を編著。最近は、日本学術振興会「人文社会科学振興プロジェクト」の共同研究メンバー、また、地域でのNPO活動にもとりくんでいる。著書に「知的トレーニングの技術」「思考のための文章読本」「日本語表現のレッスン」「嫌老社会」ほか。早大・都立大(院)卒。


