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文化学院 クリエイティブ・メディアセンター ウェブマガジン
発刊に寄せて
文化学院理事長 戸田一雄
文化学院が創立88周年を迎える 2009年に、私たちは学校の教育プログラムを、現代の芸術文化領域の拡大に合わせ、見直すことに致しました。
それは、私たちを取り巻く芸術文化状況をあくまで冷静に捉え、後世に残すべき領域を改めて括り直したものでした。それでも、「若者に人気があるというだけの(漫画や携帯小説のような)ポピュラーなお遊び文化に特化・シフトするのではないか」と、随分懐疑の眼で見られました。
私たちは、新しい教育プログラムを確立するにあたり、その基本となるコンセプトを、創立時の想いの現代的復活に絞り込んでいましたので、誘惑や、懐疑が故の非難に動じることなく、淡々と作業を進めて参りました。
文化学院の創立の前、創立者の一人である与謝野晶子は、「文化学院の設立について」という題で、新しい学校にかける想いを次のように述べています(『太陽』1921年1月)。
「私たちの学校の教育目的は、画一的に他から強要されることなしに、個人個人の創造能力を、本人の長所と希望とに従って、個別的に、みずから自由に発揮せしめる所にあります。これまでの教育は功利生活に偏していましたが、私たちは、功利生活以上の標準に由って教育したいと思います。即ち貨幣や職業の奴隷とならずに、自己が自己の主人となり、自己に適した活動に由って、少しでも新しい文化生活を人類の間に創造し寄与することの忍苦と享楽とに生きる人間を作りたいと思います。言い換れば、完全な個人を作ることが唯一の目的です」(『与謝野晶子評論集』岩波文庫)。
大変嬉しいことに、私たちの「旧くて新しく、新しくて旧い」この試みは、多くの芸術分野において素晴らしい活躍をされている先生方の大いなる賛同を頂き、2009年4月から、その実践活動をスタート致しました。私たちは、各芸術分野において、次の時代のリーダーとなる若き有能の士の輩出に、全力を傾ける決意であります。
新しい教育プログラムにおきましては、各分野の実践的技術教育(=実技の充実)に留まらず、その分野の基本となっている考え方、社会との繋がりなど、基礎として知っておくべき知識・思想(=理論)を学んで頂くことにしております。また、これらの実技と理論がそれぞれ別々に存在するのではなく、双方をしっかりと太いパイプで繋ぎ、一体のものとしてとらまえて頂ける「演習」のプロセスを重視する教育を目指しています。
この新たなプログラムのスタートにあたり、多くの先生方から、私たちの授業の軌跡をしっかり記録にとどめ、後世の教育に役立たせるとともに、一般の人々にも公開して豊かな教養の一助として頂こう、というご提案を頂きました。
サブプライムローン問題がきっかけとなり、功利主義に固まった金融資本主義の在り方が社会の批判の的になっております。心の豊かさを見失いがちな世相に、小さいかもしれないけれど明るい光を届けることができれば幸せです。
今後は「クリエイティブ・カフェ」に代表される、内外の先生方や皆様との対話のような、フェイス・トウ・フェイスの活動を積極的に推進し、また、そうしたライブの場とメディア(記録)の発信とを連携させ、知の厚みと実感に溢れた総合的な活動にして参りたいと思っております。
一連の活動を通して、心豊かな社会の実現に、僅かでもお手伝いができれば……そんな想いで、このWeb Magazineを発刊致します。また、近い将来書籍として「文化学院叢書」が発刊できればとも考えております。末永いご支援を、心よりお願い致します。
2009年10月