文化学院 クリエイティブ・カフェ vol.20
村上祐資「極地建築という道具──「生き延びること」から生まれるカタチを探しに」


Deboche, Nepal, 3650m
ここでは高価なガソリンとお湯とが同価となる


Syowa Station, Antarctica, 69°00'S 39°35'E
真似ることは生きること

概要
ゲスト 村上祐資(むらかみ ゆうすけ)
1978年生まれ。極地建築研究/東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程。第50次日本南極地域観測隊越冬隊員(2008〜2010)。NPO法人富士山測候所を活用する会研究メンバー(2010〜)。栗城史多エベレスト登山隊スタッフ(2010)。
聞き手 四方幸子(しかた ゆきこ)
メディアアート・キュレーター/メディア芸術コンソーシアム構築事業企画ディレクター。東京造形大学特任教授、多摩美術大学客員教授、IAMAS非常勤 講師。
テーマ 極地建築という道具──「生き延びること」から生まれるカタチを探しに
日時 2011年1月21日(金) 19:00~21:00
費用 500円(コーヒー・お菓子代として)
場所 文化学院・2階マルチスペース
主催 文化学院 クリエイティブ・メディアセンター

内容

少年の頃、どこからだったか黒曜石を手に入れてきて、本に載っていた写真を真似て旧石器時代の人たちが生活に使っていたという刃物を作った。まさか切れるはずがないと、おもしろ半分に自分の親指に刃先を押し当て、今でも残る小さな傷跡を作ってしまった。僅かだが自分の掌を伝い、流れ落ちる血の滴を目にした時、恐怖心とはどこか少し違う感覚、石片から道具を生み出した人々に対する畏敬の念を覚え身体が震えた。

「極地建築」

この独特の響きを持つコトバが、僕の行なっている研究の名だ。この名のもとに、これまで南極の昭和基地に約一年半、富士山山頂の測候所に約三週間、ネパールのエベレストB.C.に約三週間、それぞれの観測/登山隊の一員として現地に身を置き、生の生活を通して調査活動を行なってきた。

「極地」×「建築」の組み合わせに、皆さんはどうようなイメージを持たれるのだろう? おそらく多くの人が、過酷な環境のなかにそびえ立つ要塞のようなイメージを思い浮かべるのではないだろうか。確かにその通りだ。極限の環境条件に加え、輸送や工期といった厳しい制限のなかから生まれた「極地建築」は、生き延びること以外の不必要な要素が極限まで削がれ、まるで剥き出しの石刃のようだ。しかし実際にそこに身を置き生活を送ってきた僕には、その冷ややかな相貌の内に、人間が生き延びるために生み出してきた知恵が温かな血の滴となって、脈々と流れているように見える。

クリエイティブ・カフェでは、皆さんと一緒に交流がしたいと思っています。僕のこれまでの体験と、そのなかで考えてきたことを紹介しながら「人間が生き延びるための道具」としての建築について、一緒に考えてみたいと思います。

写真=村上祐資

レビュー