藤幡正樹「ひみつの部屋、あるいはテレビ Private Room or TV」を展示する

本田英郎

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11月20日。金曜日。夜7時。「ひみつの洞窟のなかのひみつの部屋」
洞窟のような雰囲気のあるスペースが御茶の水の文化学院のなかにある。ここで、月一回、「クリエイティブ・カフェ」という催しを行なっている。この日のゲストはアーティストの藤幡正樹さんだ。この空間で藤幡さんの作品が創作され(乾義和さん、川嶋岳史さん、小町谷圭さんが手伝ってくださっている)、この夜、集まってくれた80人を越す人達と一緒に、15分間灯りを消して作品を観賞する。「ひみつの部屋、あるいはテレビ」Private Room or TV。大事なのは作品に身を委ね、静かに「傾注」することだ。

ひみつの部屋、あるいはテレビ Private Room or TV

11月21日。土曜日。「愛おしさ」
朝6時半に文化学院のアーチをくぐる。9時の展覧会開始に備え、作品が8時45分に自動的に起動するようプログラムしてある。初日につき、起動が確実になされるかを確かめるため、澄み切った空気の「洞窟」(展示場所のことです)に同僚の長沼先生と身を潜める。8時46分を過ぎたころ、微かな不安がよぎるも、コンピュータの起動するごく小さな音が響く。眠りにつく150本を超える蛍光灯を前に、経験したことのない濃密な気配を感じる。
その瞬間は1分ほどして訪れる。蛍光灯の灯りと音がいっせいに眠りから醒めたのだ。
デザイナーの上田和秀さんと一緒に展示パネルを設置し、開場だ。

11月22日。日曜日。「クラシック」&「エレクトリック」
文化学院の前のとちのき通り(通称マロニエ通り)に出てみる。振り返って、学院の石段に視線をやる。「ひみつの部屋、あるいはテレビ」が何とも可愛らしく輝いている。この作品は、新しい視覚体験をひそやかにこの街の空間に作り出した。学院の入り口の古いアーチ、そこから続く緩やかな石段の織りなすクラシックな雰囲気と、作品のもつエレクトリックな佇まいが、ごく自然にマッチしていて、美しい。

11月23日。月曜日。休日。「見守る」
この日は学院に来られなかった。作品が、朝晩、自動的に起動し終了するかどうかを、この目で確かめられない。作動時間をコンピュータで制御しているわけだから、故障でもない限り人の管理は必要ないはずだ。でも、作品を見に来てくれる人が大勢いるから、用心のし過ぎはないと思っている。だから、展覧会の期間中、私も含めた関係者で朝晩見守ることにする。警備の方もみなさん笑顔で寄り添ってくれている。
そう、見守り感なのだ。人間と機械。人間が機械を信頼する、と同時に、そっと機械を見守ってあげる、そんな関係だ。「ひみつの部屋、あるいはテレビ」は、そのようなことを感じさせてくれる作品だ。

11月24日。火曜日。「傾注」
一般に、美術館でひとつの作品を15分間見続けることはあまりない。今回の展示では、ぜひ15分以上見てほしいと思う。言葉には尽くせない「傾注 Attention」こそ、わたしたちを作品と出逢わせる。

11月25日。水曜日。「微笑」
「ひみつの部屋、あるいはテレビ」について語る時、多くの人が微笑む。

本田英郎(ほんだ・ひでお)
1964年生まれ。編集者、クリエイティブ・ディレクター。文化学院 クリエイティブ・メディアセンター センター長/編集長。